この度マンションみどりでは東智恵、T_moeによる二人展「廻季」を開催します。東さんは大分の別府を拠点に制作活動をされており、1月からマンションみどりに滞在されていました。本展はその滞在成果発表展となります。是非ご高覧ください。
会期:2025/3/15(土)ー3/17(月) 11:00-17:00
会場:マンションみどり 〒583-0005 大阪府藤井寺市惣社2-5-22
入場無料
(展示作家より)
絵を描く行為は、しばしば時間の感覚を曖昧にする。制作の没入によって昼夜の区別が薄れ、時間の流れが捉えがたいものとして立ち現れる。時間が、捉えようとするほどに逃れ、毎日の中に消えていく。
本展では、東智恵とT_moeの作品を通じて、時間を探求する。東智恵の《廻季》シリーズは、東洋思想における時間概念を視覚化する試みである。本作では、易経に基づく「変化(へんか)」の概念を参照し、時間を単なる円環的な反復ではなく、陰陽の交替によって連続的かつ非線形に変容するものとして表現する。滲みや色彩の積層といった技法を用いることで、静止画面の中に時間の流動性を示し、絵画が時間の痕跡を宿すメディアであることを明らかにする。また、幼少期から親しんだ植物や迷信のモチーフを取り入れることで、個人的な記憶が時間とともに変容する過程を可視化し、観者に時間の多層的な存在を想起させる。
一方、T_moeの《Girl》シリーズは、デジタルとアナログのメディア特性を活かし、イメージの変容を主題とする。デジタルで描かれた原作をアナログへと転化し、さらにコピーを繰り返すことで、複製技術がもたらすズレや歪みを生じさせる。この手法は、ヴァルター・ベンヤミンの「アウラ」の概念とも関連し、オリジナルと複製の関係を問い直しながら、時間の経過による物質的変化を提示する。作品ごとに異なる色彩やテクスチャーの変化は、単なる複製ではなく、新たな固有性を生み出し、生成と変容のプロセスそのものを作品化している。
本展において、《廻季》に表現される時間の非線形性と、《Girl》シリーズにおけるイメージの変容は、異なる手法を取りながらも共鳴し合う。デジタルとアナログ、静と動、陰と陽といった対照的な要素が交錯することで、時間と変容の本質を浮かび上がらせるのである。これらの作品を並べることで、異なる技法や表現の中に共通する時間の感覚を浮かび上がらせたい。制作とは、時間を閉じ込めるのではなく、変化の軌跡を重ね、絵画として紡ぎ出す行為である。蓄積された色彩や形の層が、目には見えない時間の揺らぎを映し出す。絵画という形式を通じて、時間というものを知覚し、その痕跡を手に取るように感じる試みである。
東 智恵
大分を拠点に活動する画家。2019年、Bath Spa Universityにてファインアート修士課程を修了。女性像や植物を主題に、記憶や時間、存在の揺らぎを探求する。滲みの技法や繊細な色彩を用い、変化の本質を描くことを試みる。描く行為を通じて自己を内省し、鑑賞者の思索を促す場を生み出す。
T_moe
T_moeは、「Girl」シリーズのみを制作するアーティスト。T_moeの自我は、ひとつの個として確立されながらも、どこか外部の力によって形作られている。それは記憶の断片か、誰かの夢の残響か、あるいは見えない何かとの対話の中で生まれたものかもしれない。少女のイメージを増殖し続けることで、実体のない存在を形にしようとする。T_moeの作品は、ただの絵ではなく、半ば幻想であり、半ば現実である。
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